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2019

2019年4月20日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ

CATEGORY報告

2019420AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ

AJEQ企画委員会・研究会担当 Comité scientifique

 

2019420、立教大学にてAJEQの定例研究会が開催されました。

今回は2部構成で、第1部では、国際ケベック学会(AIEQ)の助成により初来日したケベック大学モンレアル校(UQAM)のダニエル・シャルティエ教授が、近年研究が始まったばかりのイヌイットとファースト・ネイションの文学についてご講演くださいました。

2部の研究発表では、まず、2018年度小畑ケベック研究奨励賞受賞者の1人である河野美奈子会員が、シャルティエ教授の講演とも関連してイヌーの2人の女性作家の作品を分析しました。次に、吉田悠佑会員がモンレアルのサント=カトリーヌ通りの看板や貼り紙をくまなく調査し、使用言語がかたちづくる景観を分析しました。

なお、今回シャルティエ教授の来日に合わせて、氏の主要論文 « Qu’est-ce que l’imaginaire du Nord ? Principes éthiques » の日本語訳が小倉和子会員と河野美奈子会員の共訳で出版されました(「北方の想像界とは何か 倫理上の原則」 Arctic Arts Summit, Imaginaire | Nord, 2019) 。この論文はすでに15言語に翻訳されていて、世界の北方研究のネットワークを構築するうえで重要な論考となっています。日本語訳を含む多言語版がこのたび、ケベック大学間文学・文化研究センター(CRILCQ)のご厚意により、研究会出席者に贈呈されました。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

また、残念ながら研究会にはご欠席だった方も以下のUQAMの図書館のサイトからダウンロードできますので、ぜひごらんください。

archipel.uqam.ca/12437/

研究会の詳細については、下記のご本人たちからの報告をごらんください。(小倉和子・立教大学)

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日時:4月20日(土)16001810

会場:立教大学池袋キャンパス11号館A202教室

1講演会

Daniel CHARTIERUniversité du Québec à Montréal

« Lémergence des littératures inuites et des Premières Nations »

(イヌイットとファースト・ネイションの文学の出現)

◆第2部:研究発表

(1)河野美奈子会員(立教大学)Minako KONO (Université Rikkyo)

「彼女たちの「ケベック」:イヌー文学作品におけるフランス語と女性を巡る一考察」

« Le Québec » pour les femmes écrivains innues : réflexion sur la langue française et les femmes dans les littératures innues.

(2)吉田悠佑会員獨協大学大学院Yusuke YOSHIDA (Université Dokkyo)

「モントリオールにおける看板およびはり紙での使用言語について」

À propos des langues utilisées pour les enseignes et les affiches à Montréal

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Daniel Chartier教授の講演

Depuis maintenant une dizaine d'années, l'émergence des littératures autochtones marque l'institution littéraire québécoise: depuis la parution du roman Kuessipan de Naomi Fontaine, puis des recueils de poésie de Joséphine Bacon, le courant d'écriture des femmes innues accumule les succès critiques et pose des questions de fond pour la littérature et les études littéraires. Les lecteurs québécois découvrent en français un monde de pensée, des préoccupations sociales et culturelles et des perspectives jusque-là méconnus, bien qu'il s'agisse d'un peuple vivant sur le même territoire. En même temps, des auteurs hurons-wendat publient des œuvres, fondent une librairie et une maison d'édition autochtones, et organisent un Salon du livre des Premières Nations. En parallèle, émerge du Nunavik de premières œuvres écrites, qui s'inscrivent dans le courant circumpolaire des littératures inuites. Ces phénomènes prennent racine dans une réappropriation culturelle et politique des Premières Nations et des Inuits, et permet la production et la réception d'œuvres littéraires qui induisent un changement de perspective des études littéraires, notamment sur les questions des limites du corpus national, sur la question des genres (fragment, autobiographie, flottement du point de vue de la narration, mixité des formes) et sur celle, complexe, des principes éthiques qui doivent guider les lectures et les interprétations.

 

河野美奈子会員の発表

本発表では、カナダケベックの先住民であるイヌーの女性詩人ジョゼフィーヌ・バコン(1947- )の『メッセージ・バトン』(2009)と作家ナオミ・フォンテーヌ(1987- )の『Kuessipan(2011)のなかで象徴的に示される「silence」という言葉に着目し分析することで、彼女たちのフランス語、そしてケベックへ向ける眼差しを明らかにしようとした。

 まずジョゼフィーヌ・バコンの『メッセージ・バトン』において「silence」は言葉を奪われた「沈黙」であり、そのことに対する「怒り」であった。彼女は奪われた言葉を取り戻すため、そして失った祖先の道を再び見出すために「silence」と対峙しようとしたのである。次にナオミ・フォンテーヌの『Kuessipan』はイヌー文学において初めて居留地の世界を描いた作品である。「silence」を用い、一方では居留地に横たわる問題を浮かび上がらせようとした彼女は、他方で「silence」が有する「静寂」としての側面を用い祖先の記憶を未来へと繋げようと試みた。

 会場からはイヌーの言葉の多様さとイヌー作家がなぜ女性しかいないのかという質問をいただいた。発表者の関心もまさにその点にあり今後の研究の課題としたい。

 

吉田悠佑会員の発表

本発表では、モントリオールで見かける看板やはり紙の言語について言語景観の観点から量的調査と質的調査を行い、分析した。量的調査では20184月、9月、10月に撮影されたGoogleストリートビューを用い、Sainte-Catherine通り(11km程度)にある看板の言語をまとめた。有効件数は770件であり、言語の特定が行えなかったもの(人名や略語など)38%、フランス語のみが33%、英語のみが16%、そして両言語併記又はフランス語、英語のどちらとしても読めるものは12%という結果になった。言語の特定が行えなかったものの割合が多くあったため、より正確な結果を出すためにはさらに細かく分類することや分析が必要となる。しかし、今回の結果によりSainte-Catherine通りを東から西へ移動した際に、予想に反しておおよそBeaudry駅からケベック大学モントリオール校付近でフランス語の使用が減少している可能性を示唆することができた。また質的調査では、コンコルディア大学構内、またその付近のはり紙を分析した。その結果、英語で教授がされている大学では基本的に英語が優先されることがわかった。しかしながら、路上においては両言語併記されていることもあり、またそのような大学近辺の店舗は、フランス語憲章の影響も見受けられるが、英語が最優先されている可能性があることも分かった。

2019,4,20D.Chartier 北方の想像界とは何か? IMG_1139-2.jpg 

 2019,4,20M.Kono  2019,4,20Y.Yoshida

  2019,4,20 2019,4,20

(© Norie YAZU, Kazuko OGURA

 

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