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03
2019

2019年6月22日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ

CATEGORY報告

2019年6月22日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ

AJEQ企画委員会・研究会担当 Comité scientifique

 

 2019622、立教大学にてAJEQの定例研究会が開催されました。

1発表では、村石麻子会員がケベック現代演劇の原点ともいえるミシェル・トランブレ―の作品を「新しい福音」という視点から分析しました。

2発表では、Sylvain DETTEY他編著のLes variétés du français parlé dans l’espace francophone, Editions Ophrys, Paris, 2010の編訳『フランコフォンの世界―コーパスが明かすフランス語の多様性』(川口雄二他編訳、三省堂、2019)を、編訳にたずさわった矢頭典枝会員が、翻訳協力者の1人である近藤野里会員とともに、音源もまじえて紹介しました。

以下、ご本人たちからの報告をごらんください。

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日時:6月22日(土)16001745

会場:立教大学池袋キャンパス11号館A201教室

(1)村石麻子会員MURAISHI Asako

「ミシェル・トランブレーの新しい福音連作『プラトー・モン・ロワイヤル年代記』における神話・聖書のイマジネーション」

Le nouvel évangile du Québec selon Michel Tremblay : l'imaginaire mythique et biblique dans le cycle romanesque Chroniques du Plateau Mont-Royal

 (2)矢頭典枝会員神田外語大学YAZU Norie (Université Kanda-gaigo)

  近藤野里会員(名古屋外国語大学)KONDO NoriUniversité des Langues Etrangères de Nagoya

「共訳編著『フランコフォンの世界』の紹介―北アメリカ、アフリカと海外県・海外領域圏を中心に 」

Les variétés du français parlé dans lespace francophone : LAfrique, les DROM et LAmérique du Nord

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村石麻子会員の発表

本発表は、ミシェル・トランブレーにおける神話・聖書の影響を探ったものである。60年代の「静かなる革命」という時代の変革期に、神話がどのようにフィクションに介入するか検証を試みた。

まず作家の伝記的背景と、バルザック、ユゴーなどのフランス人作家との比較から作風を概観した。次に代表的小説連作『プラトー・モン・ロワイヤル年代記(Chroniques du Plateau Mont-Royal)』における神話及び聖書のイマジネーションとして、運命の女神パルクと黙示録について分析した。トランブレーのパルクは、ギリシャ神話と異なり、人間の運命を支配する峻厳な女神ではなく、運命に翻弄され懊悩する人間に歩み寄り見守り共感する慈悲深い女神である。また終末を預言する黙示録は、トランブレーにとっては、時代に取り残された呪われた一族の凋落と同時に、フランス系カナダ人の歴史の終焉、つまりケベック人としての再生とアイデンティティの再構築を暗示している。こうした神話的想像力を通じて、新しい世界のヴィジョンを人々に啓示する意識改革の弛みない努力こそが、時代の先駆者のもたらす福音=良い知らせであると結論した。

会場からは、フランス人作家の具体的な影響、新しい福音という演題のオリジナリティ、先住民神話との関係等、示唆深いご見解・ご質問を頂いた。その点を鑑みつつ、価値観の転換期における神話と文学の関連について考察を深めることが、今後の課題である。(村石麻子)

 

矢頭典枝会員と近藤野里会員の発表

本発表では、20192月に三省堂書店から出版された『フランコフォンの世界』を紹介した。本書は原著Les Variétés du français parlé dans l’espace francophone (Detey, Durand, Laks, Lyche 編著)の翻訳版ではあるものの、日本で出版するために、専門的すぎる内容、日本の教育現場に必ずしも適合しない内容などを縮減することによって、日本のフランス語学習者、語学教師向けにアレンジして出版された。フランス語の多様性はともすると教室の中で忘れられ、ただ1つの規範的なフランス語を教える・学ぶというになりかねない。本書はフランス語が世界中で話され、多様性を持つ言語であるという事実を再認識させるような内容である。本書には話し言葉のフランス語の会話例が収められている上に、三省堂書店のHPではその会話の音声を実際に聞くこともできる。本発表では、特にこの会話例の北アメリカ、アフリカと海外県・海外領域圏のフランス語の会話例と音声を紹介した。(矢頭典枝・近藤野里)


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